いよいよ3月決算の申告期限となる5月となりました。件数も多いことから申告準備に慌ただしくなります。決して事故を起こさないように注意していきましょう。
さて、多くの企業では決算時に在庫や原材料、貯蔵品などを計算し、棚卸資産として決算書上に記載しています。この棚卸資産について消費税の免税事業者から課税事業者になる際、また課税事業者から免税事業者になる際に消費税額の調整が必要となります。この調整は免税事業者から課税事業者の場合と、課税事業者から免税事業者の場合で違いがありますので、ご紹介いたします。
まず免税事業者から課税事業者の場合です。ここでは前期まで免税事業者、当期より課税事業者とします。この場合、当期の期首時点における棚卸資産をもとに仕入税額控除を追加します。これは前期までの免税事業者時代に仕入れて仕入税額控除を行わない一方で、課税事業者になってから販売することで売上に係る消費税のみを申告することとなり妥当ではないため、整合性を保つ上で控除が認められています。
次に課税事業者から免税事業者の場合です。ここでは当期まで課税事業者、翌期より免税事業者とします。この場合、期末棚卸資産のうち当期に仕入れた分をもとに仕入税額控除から除外します。これは課税事業者時代に仕入れて仕入税額控除をする一方で、免税事業者になってから販売すると売上に対する消費税を申告しないことになり、売上と仕入の消費税のバランスがとれなくなるためです。
ここで注意が必要なのは、対象となる期間に違いがある点です。免税事業者から課税事業者の場合は免税事業者時代に仕入れた分すべてが対象となるのに対し、課税事業者から免税事業者の場合は課税事業者の最終事業年度に仕入れた分のみが対象となります。どちらも納税者有利な規定となっています。なお、簡易課税事業者を選択されている場合は、この調整自体が不要となります。
棚卸資産にかかる消費税の調整は極めて専門的な内容なので、ご自身で申告されている方の中には調整すること自体をご存じない方も多いかと思います。正確な納税・申告を検討されている方は、一度税理士法人優和までお問い合わせください。