東京商工リサーチが昨年11月に公表した2019年「後継者不在率」調査によると、中小企業で後継者が決まっていない「後継者不在率」は55.6%と、半数以上の企業に及ぶことがわかりました。代表者の年齢別では、60代が40.9%、70代が29.3%、80代が23.8%で、代表者の高齢化が後継者難に拍車をかけている状況も浮かび上がっています。産業別では、人手不足の影響が深刻な労働集約型の「サービス業他」、「小売業」などで後継者不在率が高くなっています。この状況が続くと、新設法人数が減少している「小売業」は衰退し、国内市場の拡大と健全な競争環境の維持に影響を与えかねません。
後継者ありと回答した企業8万4579社のうち、同族への承継を予定している企業は5万7187社で約7割を占めています。従業員へ承継する「内部昇進」、社外の人材に承継する外部招聘は、いずれも20%を割り込んでいます。
一方、後継者不在の企業10万5942社を対象に、中長期的な承継希望を尋ねると「未定・検討中」が半数を超えました。まだ、現場では事業承継への方針すら明確でない、あるいは計画できない企業が多いことがわかりました。また、頭では理解できているとしても、「会社を売却・譲渡」「外部からの人材招聘と資本受入」への抵抗が根強い傾向にあるようです。
このような事業承継に対して、経済産業省・各経済産業局が「事業承継引継ぎ支援センター」を開設(運営は各自治体)した他、民間のM&A仲介、事業承継時の相続税・贈与税の納税が猶予になる事業承継税制を設けました。中小企業白書(2017年版)によると、後継者の選定から了解を得るまでに要する期間は、承継準備が不十分な場合だと3年以上かかると言われています。事業承継には長い期間が必要で、高齢になるほど時間的猶予は短くなってしまいます。後継者が決まっていない場合、代表者の急病や死去などで事業継続が困難なケースも起きる可能性があります。
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