11月に国税庁は、平成28事務年度(平成28年7月~平成29年6月)の法人税等の調査事績の概要を公表しました。調査は9万7千件(前年比103.5%)実施され、非違があった法人は7万2千件(同103.7%)、申告漏れ所得金額は8,267億円(同99.5%)、追徴税額は1,732億円(同108.8%)でした。
1.主要な取組
主要な取組として、ここ数年変わっておりませんが、次の3項目をあげています。
(1)消費税還付申告法人に対する取組
調査件数も非違件数も前年より減っていますが、追徴税額は296億円(前年比194.6%)となっています。不正還付等への対応が重点となっています。
(2)無申告法人に対する取組
法人税・消費税ともに調査件数は微増ですが、法人税の追徴税額は63億円(前年比138.7%)、消費税の追徴税額は50億円(同124.4%)となっています。申告をしていない稼働法人に対するものです。
(3)海外取引法人等に対する取組
法人税の調査件数は1万3千件(前年比104.1%)、非違件数が3千件(同99.2%)、申告漏れ所得金額は2,366億円(同123.4%)となっており、1件当たりの申告漏れ所得金額が大きいのが特徴です。海外の取引先からの売上を除外する等の不正計算を行うものが見受けられるとのことです。非居住者や外国法人に対する工業所有権等の使用料等や人的役務提供事業の対価などの支払についての源泉所得税については、非違件数は微増で追徴税額は42億円(前年比25.0%)で、前年に大きな案件があった影響と思われます。中小企業においても事業の国際化が要求され、海外取引についての重要性が増してきているようです。
2.公益法人等
法人税の申告義務のある(収益事業を行う法人)法人数と調査件数は次の通りです。公益法人等合計で法人数は36,800件、宗教法人13,400件、財団・社団法人13,700件、社会福祉法人2,200件、学校法人2,300件、その他5,100件で、調査件数は全体で696件(前年比96.4%)となっています。源泉徴収義務者である法人数と調査件数は次の通りです。公益法人等合計で法人数は165,100件、宗教法人51,500件、財団・社団法人21,500件、社会福祉法人22,400件、学校法人8,100件、その他61,400件で、調査件数は全体で4,258件(前年比99.9%)となっています。公益法人等については源泉所得税の調査が中心ですが、あまり意識せず収益事業を行っている場合もあり、注意が必要です。
埼玉本部 飯野