令和5年度税制改正により、令和7年1月1日から「極めて高い水準の所得に対する負担の
適正化」、通称”ミニマムタックス”が導入されました。
給与所得者は、最大45%の累進課税が適用されます。しかし、自社株、不動産を売却して
巨額の所得を得ても分離課税が適用され、所得税が15%(復興特別所得税を除く)の低い
税率で済んでしまいます。
財務省が2022年10月に公表した個人所得課税に関する参考資料によれば、申告納税者の
所得税の負担税率は、所得金額1億円までは右肩上がりで上昇していくものの、1億円を
超えると逆に所得税の税率が右肩下がりで下降していきます。これが「1億円の壁」と
いわれており、この税率の逆転現象を解消するために、この制度ができました。
具体的な計算式は、その年の基準所得金額(総合課税及び分離課税等の各所得を合算した
所得金額)から3億3,000 万円を控除した金額に22.5%の税率を乗じた金額が基準所得税額を
超える場合に、その超える金額に相当する所得税が上乗せされます。
対象となる方は、令和5年度税制改正が発表された当初の報道では、3億3,000万円の
控除があり、金融資産保有額が5億円以上あり、年間合計所得が30億円以上ある方で、
数百人程度と言われていました。
対象者が少ないと言われている税制ですが、近年では
①不動産価格の高騰
②M&Aによる自社株の譲渡
③相続対策による資産管理会社へ株の譲渡
④IPO
等で多額の所得を一時的に得る経営者の方も増えているのではないでしょうか?
そのような場合は、売却した年だけは対象となるかもしれません。
試算によると売却益が10億円を超えた場合にはミニマムタックス課税の対象となる
場合があります。
該当するケースが少ないために、見落としやすい税制改正かと思います。
確定申告で当初想定していた以上の税負担が発生しないように、契約、売却前から
専門家に相談することをお勧め致します。