本年1月16日に民法改正案の要綱案が取りまとめられることとなりました。具体的な内容としては、以下になります。
1.配偶者の居住権の新設
相続人が妻と子供1人のケースで、自宅の評価が5000万円と預金が5000万円だったと仮定します。この場合に、現行の法定相続分で遺産分割した場合の取り分は以下となります。
妻→自宅(5000万円)
子供→預金(5000万円)
せっかく夫婦2人で築いてきた財産にも関わらず、妻は預金を相続することが出来ず、老後の資金に不安を抱えることとなります。そこで、自宅の評価5000万円を居住権と所有権に分けるようになります。仮に居住権(3000万円)を妻が相続し、所有権(2000万円)を子供が相続するとしたら、
妻→自宅の居住権+2000万円
子供→自宅の所有権+3000万円となります。
居住権は配偶者の年齢の平均余命から算出され、高齢者ほど安くなります。
2.介護に貢献した親族への金銭請求権
例えば、長男の嫁が長男の両親を介護していたとします。この場合に、既に長男が死亡していたとすると、長男の両親に相続が発生しても長男の嫁は何らの相続財産を手にすることは出来ませんでした。そこで、生前の介護の貢献がある一定の親族については、相続人への金銭請求権を得られることとなりました。
3.自筆遺言の柔軟化
今までは、自筆の遺言書に付ける財産目録は自筆以外は認められていませんでした。しかし、今後はパソコンで印字したものについても認められることとなります。話は変わりますが、茨城本部でも昨年度だけで10件近くの公正証書遺言作成に立ち会いさせて頂きました。生前の故人のメッセージを残すことは、残された人たちにとって大変重要です。沢山の財産があるケースは勿論のこと、そうでない場合であっても出来る限り遺言書を作成することをお勧めいたします。実際に相続トラブルに発展するケースの多くは相続税の基礎控除程度(3000万円+法定相続人の数×600万円)の財産を保有している方が亡くなった場合だそうです。
4.婚姻期間が長期間の場合に配偶者が生前贈与や遺言で譲り受けた住居は原則として遺産分割の計算対象とみなさない。結婚20年以上の夫婦であれば、生前贈与や遺言で贈られた自宅は遺産の総額から除外されることとなりました。これにより、住まいを確保できるとともにその後の生活資金にも余裕が生まれることとなります。見直しの目的は、長年連れ添った配偶者の優遇だそうです。高齢者の再婚が増える中で夫婦関係にあった期間の長さが相続に反映されるよう配慮がされました。
超高齢化社会を迎えるにあたり、相続の事案は今後も多く発生することになると思います。家族がお互いのことを思いやり、ハッピーエンドとなるように早め早めの対応を心がけるべきと思います。今回の原稿が皆様のお役に少しでも立てれば幸いです。
茨城本部 楢原