平成30年度の税制改正大綱(与党公表)が昨年の12月14日に発表になりました。これによると、非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予の特例制度が創設され、従来の事業承継税制に比べて大盤振舞いの内容となっており、中小企業経営者にとっては正月早々ビッグなお年玉となりそうです。
■改正の内容
1.納税猶予対象株式は、従来発行済議決権株式総数の3分の2に達するまでの株式でしたが、今回の特例制度では取得した全ての株式が対象となります。
2.納税猶予税額は、従来ですと贈与の場合は納税猶予対象株式に係る贈与税の全額、相続の場合は納税猶予対象株式に係る相続税の80%が猶予されていましたが、改正後は贈与の場合は納税猶予対象株式に係る贈与税の全額が猶予され、相続の場合納税猶予対象株式に係る相続税の全額が猶予されます。つまり、後継者が相続により株式を100%承継した場合、今までは納税猶予されるのは2/3×80%=約53%でしたが、今後は100%猶予されることとなります。
3.雇用確保の要件として、従来は経営承継期間内の一定の基準日における雇用の平均が「贈与時又は相続時の雇用の8割」を下回った場合には、納税猶予は打ち切りとなっていました。今後は「贈与時又は相続時の雇用の8割」を下回ったとしてもその要件を満たせない理由を記載した書類を都道府県に提出すれば納税猶予は継続されることとなります。
4.先代経営者の要件として、従来は代表権を有する又は有していた先代経営者1人から、株式を承継する場合のみ適用対象となっていましたが、複数人(代表者以外の者を含む)からの特例後継者への承継も適用対象となります。
5.後継者の要件として、従来は代表権を有している又は代表権を有する見込みである後継者1人への承継が適用対象でした。今後は代表権を有する複数人(最大3名)への承継も適用対象となります。
6.譲渡・合併・解散等の納税猶予税額の減免があります。従来は株式の贈与時・相続時の相続税評価額を基に計算した納付税額でしたが、一定の要件を満たす場合には、株式の譲渡もしくは合併の対価の額又は解散の時における相続税評価額を基に納付金額を再計算し、当該納付金額が当初の納税猶予税額を下回る場合、差額は免除されます。
7.相続時精算課税制度の適用対象者は、従来贈与者は贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母又は祖父母、受贈者は贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属等でしたが、今後は贈与者(その年の1月1日において60歳以上)の推定相続人以外の者(同日において20歳以上)である特例後継者も適用対象となります。
この制度は10年間の特例措置で、その他中小企業の要件、事業承継計画の内容、特例認定承継会社、特例後継者の要件、上記6.の経営環境の変化を示す「一定の要件」等、チェックすべき複雑な要件が多数ありますし、その他所要の措置が講じられてきますので、今後の改正の内容を注意深くチェックする必要があります。
東京本部 渡辺