それなりに成功を収めた中小企業のオーナー社長が次に
考えることといえば、やはり事業の承継しょうか。
中にはM&Aや親族外承継といったケースもありますが、
多くのオーナー社長としてみるとできれば親族内での
承継を望まれる方が多いのではないでしょうか。
希望通り親族内での承継者が決まったとして、次の問題
はその会社の株式をどのように承継していくかという
ことでしょうか。
オーナー社長もそれなりに若く10年20年のスパンで株式
の承継を考えるのならば、毎年基礎控除の範囲内もしくは
それに近い価額での暦年贈与を繰り返すという手法が
ひとつの王道としてあります。
だが残念ながらオーナー社長もそれなりの年齢で、かと
言って年々評価の上がっていく株価について無策のまま
来るべき相続税課税時期の評価に身を委ねるのはあまり
にもリスキーだということで、金融機関等は後継者が
資産管理会社を作り、そこにオーナー社長の所有する
株式の買取資金を融資してオーナー社長は後継者が出資
する資産管理会社に対し株式を譲渡するというスキーム
を提案されることが多く見受けられます。
ここで注意するべき点は、株式の評価方法です。
個人が会社に株式を譲渡する場合の株価は相続贈与等で
用いられる、いわゆる財産評価基本通達(以降財基通と
いう)に基づくものとは若干異なるという点です。
基本的には財基通をベースとしての評価であるのですが、
株価の算定にあたり財基通を用いた場合よりも評価が
高くなる可能性が極めて高く、万が一財基通で評価して
しまった場合、時価との差額が2分の1以上の開きがある
と時価で譲渡があったとみなして譲渡所得の申告をする
こととなり、当然資産管理会社に対しては同様に法人と
して受贈益が発生するし、更には低額で譲渡したという
ことで資産管理会社の株価が上昇したという事実に対して、
オーナー社長から資産管理会社の出資者たる後継者に対する
みなし贈与であると認定される可能性もありそうです。
所得税基本通達通りに評価すれば確かに加算税等の課税は
逃れられますが、当初想定していた金額よりも多額の買取
資金が必要となり、譲渡所得に対する税金や借入利息も
膨らみ終わってみたら無策のまま相続を迎え、相続税を
払ったほうがコストの総額からして安かったなんてこと
もないとは言い切れません。
もし、資産管理会社も使った自社株対策を立てる場合は
その辺りも充分に考慮する必要がありそうです。