「東京高裁 子会社に対する債権放棄は貸倒損失には該当せず、寄付金に該当すると判断」
2017年7月26日 東京高裁が債権放棄額の損金算入の可否を巡り争われた事件について、貸倒れに該当しないと判断しました。
今回の事例は次のとおりです。
建設関連会社Kは傘下にX・Y・Zの3社の他、数社の子会社を有する企業グループ集団でした。
この子会社3社は財務状況悪化に伴い、財務改善計画書を策定し、他の子会社Sに事業の全部を譲渡しました。
そして、X及びYにおいて特別清算が決了し、KにおいてX及びYに対して有する債権約10億円を放棄、その債権放棄額を貸倒損失としてKの損金の額に算入しました。
その後、税務調査により本件債権放棄額は寄付金の額に該当するとして税務署による更正処分が行われました。
Kの主張は以下のとおりです。
① X及びYは実質的に債務超過状態であった。
② 財務改善計画書が策定されてから実際に債権放棄が行われるまでに3年以上が経過している。
③ 本件債権放棄は特別清算手続きによる裁判所の許可に基づき行われた個別和解によるものだが、特別清算協定認可の決定と同視し得るものである。
以上の3点の理由により、債権放棄額は損金算入可能と主張。
これに対し、裁判所の判断は以下のとおりです。
① X及びYは売上総利益の一定水準の維持など、事業継続性の改善が見込まれる一方で、借入金の大半がKを債権者とするものであった。
② X及びYの特別清算は、そもそもKのメインバンクからの打診であり、X及びYは財務及び収益を改善しながら事業を継続することが可能であったといえる。
③ 個別和解は特別清算協定認可の決定ではないため、これを同視することはできない。
④ X及びYは債権放棄当時、倒産の危機に瀕していない。
以上の4点の理由により、本件債権放棄額を貸倒損失として損金参入を認めることはできないと判断。
今回の判決は、組織再編が進む昨今において、弊社にくる問い合わせの中でもこれに近い事案が多くあったことから今後の対応に重要な意味をもつ判断でありました。
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