他の法人に対して債権を有している法人が、その債権の回収が見込めない場合で、かつ、税務上貸倒損失の要件を満たさない状況にあるにもかかわらず、不動産売買を介して実質的に貸倒損失相当額を損金の額に算入した件につき、東京地裁がこれを棄却しました(平成30年(行ウ)第529号)。
事件は、まず第一段階として、不動産業を営む法人が債権を有する法人から時価7,000万円の不動産を1億8,000万円で購入し、この譲渡対価を有していた債権と相殺することで貸倒懸念債権を棚卸資産に振り替えました。
次にこの時価7,000万円(帳簿価額1億8,000万円)の棚卸資産を第三者に5,000万円で売却することで、帳簿との差額(5,000万円-1億8,000万円=△1億3,000万円)を売上原価として損金算入し、法人税の確定申告を行いました。
この売上原価の損金算入の是非を巡り、東京地裁は時価よりも高額で取得した棚卸資産の評価方法について、法人税法や施行令に直接の規定が設けられていないが「寄付金の考え」を考慮した上で、本件売上原価は損金算入すべき売上原価とは異質なものであり、損金算入できないと判断しました。
今回の取引については、明らかに”異質”な取引と感じるところであり、「法人税法に規定がない」からといってこのような取引が容認されることはないと思います。
例えば、貸倒懸念債権があり、かつ債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、書面により債務免除通知を行った場合には貸倒損失の損金算入が認められます(法基通9-6-1)。
また、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒損失の損金算入が認められます(法基通9-6-2)。
では、これらの規定にある「弁済を受けることができないと認められる場合」や「回収できないことが明らかになった場合」とはどのような状態をいうのか、という疑問が生じると思います。
この点が税務調査でも争点となることが多く、納税者の方も悩まれるポイントであると思います。
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