居住用不動産を購入した場合に消費税の還付を受けることを目的として実行されることが多い、金地金取引による消費税還付スキーム。このスキームを活用する場合、建物の課税仕入れの時期について注意が必要です。
東京高裁が2019年9月26日、金地金による消費税還付スキームによる2つの事件について、納税者の控訴を棄却しました。
しかし、これは金地金取引による消費税還付スキームが否認された訳ではなく、消費税還付の対象となる建物の「課税仕入れの時期」について争われた事案になります。
「課税仕入れの時期」とは、建物を取得した場合に支払う消費税を税務上、認識する時期のことを指しますが、この時期について原告である納税者は「売買契約を締結した日」をもって課税仕入れの時期として税務申告を行ったところ、課税庁は「引き渡しを受けた日」をもって課税仕入れを認識すべきであるとしました。
そもそも税務上は、固定資産の譲渡の時期について「その引き渡しがあった日」とする一方で、建物等は「契約の効力発生の日」とすることができる旨を認めております(消費税法基本通達9-1-13)。
では、この「契約の効力発生の日」とは何を指すのかというと、建物等の現実の支配が移転し、譲渡契約に係る権利又は債務が確定するに至った状態をいうと解されております。
通常、建物等の売買契約は契約日において直ちに所有権が移転することは少なく、例えば事業者間における売買契約の場合は資金調達のための融資特約が付される場合等、所有権が移転するまでに1ヵ月以上かかる場合が大半です。
このような場合、売買契約書の締結日はあくまで取引の事実を当事者が確認した日付けに過ぎず、所有権が移転するまでは「引き渡しがあった」と同じ状態とはいえないケースが多いと思います。
金地金取引による消費税還付スキームは、還付を早期に実現することや非課税売上げが発生するタイミング等から決算短縮を行うケースが多く、このように課税仕入れの時期には十分な注意が必要です。
税理士法人優和では、意図的な租税回避によるスキームの組成支援は、当然にお受けできないものの、適正な納税申告の観点から税務上の取扱いに関するご相談・税務支援を積極的に力を入れております。
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